地中の浅い深度に灌漑した水は必ず地下水へ辿りつきますか?

地表面から浸み込んだ水(降水など)は蒸発によって失われる部分があります。地中の浅い深度に灌漑した水も、また、地表面から浸透した場合と同じように蒸発によって失われる部分があると考えます。必ず地下水へ辿りつくとは限らないと考えます。以下は1つの考え方としてご参考にしてください。


地表面から地中へ入り、地下水面にまで達する水(=土壌水)は、鉛直上方に動くポテンシャルをもつものと、鉛直下方に動くポテンシャルをもつものに区分できます。この境界をゼロフラックス面と呼びます。ゼロフラックス面は不飽和土中に存在し、その位置は地表に近い方から、①地表②ゼロフラックス面より上側(不飽和帯)③ゼロフラックス面、④ゼロフラックス面より下側(不飽和帯)⑤毛管水帯(不飽和帯)、⑥地下水面(飽和帯)、となります。ゼロフラックス面は、その土地の気候や植生状態、地下水面の位置、土壌の水分状態や温度、地表面の日射や風速等の環境条件によって位置(深度)が変化し、我が国の風土ではおおよそ地表面下数10cm~数m程度に位置するのが普通です。例えば降雨時はゼロフラックス面は地表にあり、時間が経過するにつれて徐々に深い深度へ移動していきます。(ゼロフラックス面が2つある場合もありますが、ここでは説明を省略します)
ゼロフラックス面より深い土壌水は蒸発することがありません。つまり地表(地中)から灌漑した水がゼロフラックス面よりも深い深度に移動すれば、必ず地下水へ辿りつくことになります。
なお一般的に土粒子が細かい土壌ではゼロフラックス面が深く、砂などの土壌では浅い傾向にあります。砂では通常、深度20~30cmより浅い部分に位置すると思います。粘土質の土壌では深度1mよりも深いケースがあります。砂の様なゼロフラックス面が浅い場合の方が、降水が地下水へ到達する確率が高いと言えるのではないでしょうか。一方で、灌漑深度から毛管力などによりゼロフラックス面よりも鉛直上方に移動する水が存在した場合は、その水は常に蒸発するポテンシャルを持つことになり、地下水へは辿りつきません。せっかく灌漑しても蒸発して失われてしまうのでは意味がありませんので、地中灌漑を行う際は、ゼロフラックス面が位置する深度をきちんと把握することが重要と思います。ただしゼロフラックス面は常に位置が変化する性質のものですから、管理するのは容易ではありません。

 

 

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