会長メッセージ

地下水学会誌57巻3号巻頭言

会長を拝命するにあたって

公益社団法人 日本地下水学会 代表理事・会長

東京大学 大学院 新領域創成科学研究科 教授 德永 朋祥

 2019-2020年度の公益社団法人 日本地下水学会代表理事(会長)を拝命いたしました東京大学大学院 新領域創成科学研究科の徳永朋祥です。杉田 文副会長(千葉商科大学),中島 誠副会長(国際航業株式会社)をはじめ,総勢14名の理事の方々とともに,これまで諸先輩方が築き上げてこられた本会の更なる発展のために,微力ながら尽くしていきたいと考えておりますので,会員の皆様方には,ご協力並びにご指導・ご鞭撻のほどどうぞよろしくお願い申し上げます。

 日本地下水学会は,本年,学会設立60周年を迎えることになりました。本学会は,2010年に公益社団法人として認定され,ここ数年は,特に,学会員へのサービスに加え,社会との関連に視点を置いた学会活動を積極的に行ってきています。公共性の高い資源としての地下水という観点から,「地下水ガバナンス」について議論を行うグループを学会内に設置し,地下水学会員の主体である理学・工学・農学の分野に加え,社会科学を専門とする研究者にも参画していただくことを通した検討を進めています。また,地方自治体等で地下水に関わる業務に関わられている方々との意見交換を行うことを通し,持続可能な地下水の利用と保全に資する活動も行っています。これらの活動は,これまで培われてきた地下水学の知を基盤としつつ,人間-自然系の中の構成要素の一つである地下水に関わる学問をリードする学会としての新しい方向の提示とその実践であり,今後とも学会の重要な活動として継続・発展させていくことが有意義であると考えています。健全な水循環を支えるうえでは,地下水は中心的な課題であると理解しますが,一方で,直接見ることができないうえに,地下に三次元的に存在し,帯水層を構成する固相の間隙に存在するという特性を持ちます。このような特性に基づく地下水の時空間的な変化を適確に把握し対応することと,社会の仕組みの中で,コモンズとしての要素が強い地下水を適切に位置づけ,現在および将来世代の幸せにつなげていくことに向かいあい,最良の解を探求することは,現代的な課題と言えます。この課題に対して,日本地下水学会だからこそできる貢献があるはずであり,学会員の皆様とその実現に向けて活動を進めていきたいと考えています。

 現在,日本地下水学会は,約790名の会員(特別会員を含む)から構成されています。学会では,学会誌の発行,春季・秋季講演会の実施という基盤的な活動に加え,シンポジウム・セミナー・講習会や,委員会の活動等を行っています。これらの活動が,学会を構成する会員の皆様に満足をいただけるものであり,活動に参加することを通して学会に関わって行くという気持ちを持っていただくことが極めて重要なことであると認識しています。地下水学会誌は,和文誌であることの特徴を活かすことを意図し,ここ数年は,テーマを設定した特集の編集を中心として,会員の皆様に地下水学に関わる情報をお伝えするという方針で会誌編集を進めています。今後,特集に加え,誌面講座等の企画や,地下水に関わるデータベースの充実等を通し,本学会が「地下水に関する知の集積の場」としての機能を持つことが必要だろうと考えています。同様に,基盤的活動である春季・秋季講演会に,学会員の皆様や,地下水に興味を持つ方々がより積極的に集まってもらうための工夫を行うことで,本来の学会の意義である,互いに切磋琢磨する場としての学会,新しい情報を得られることが期待される場としての学会,参加することが楽しいと思えるような学会,となることを通し,次の世代を担う若手,大学院生等にも学会活動に参加をしていただけるように考えていきたいと思います。その中には,日本に滞在している多くの留学生に,日本に来て地下水学を学んだことが素晴らしい経験であったと思ってもらい,日本に同時期に滞在した様々な国から来た留学生間のネットワーク,留学生と日本人学生・研究者・技術者のネットワークを構築する場としての学会という位置づけも見せられればと思います。これは,国際化という観点からの一つの切り口として,学会が考える必要があることではないかと思います。

 地下水に関わる科学・技術は,様々な現象の理解にとって重要であり,地下空間・地下環境を我々の社会がどのように利活用していくのかというデザインを進めるうえで鍵となるものです。地下水が,水循環の構成要素の一つであり,我々にとって重要な水資源となっていることはよく知られており,最近では,水循環基本法並びに水循環基本計画に基づく健全な水循環の確保と地下水を含む水資源の持続可能な利用と保全が議論の遡上にあがり,近々行われる水循環基本計画の改定とも相まって,地下水に関わる産・学・官・民の各々の立場から真摯な検討が求められています。また,地下環境は,私たちの高度な生活にとって重要な領域であり,それは,トンネル・地下街・地下を利用したユーティリティ施設といった私たちの生活に直結したインフラから,地下水を含む地下での流体挙動を積極的に活用した石油・LPGなどのエネルギー資源備蓄,放射性廃棄物の処分や二酸化炭素の地中貯留といった課題までが対象となります。福島第一原子力発電所事故に伴う汚染水問題においても,地下水の流入や凍土壁による対策など,地下水学が深くかかわる部分があります。それらの基礎となる学術の更なる発展と社会での実装につながる技術開発は,日本地下水学会にも期待されていると感じています。そのためには,他の学協会との積極的な連携もこれまで以上に行っていくことが不可欠になってくるものと考えます。

 学会の存在と学会活動が,学会員の方々,また,社会の多くの方々にとって有意義であり,地下水学が夢のある学問領域であると認識していただき,日本地下水学会が,地下水に興味を持つ多くの方々の集いあう場となり,そこでの活動に参加することを通して、人類社会と自然環境がともにより豊かになることに貢献することが学会の目標であると考えております。皆さんの学会活動への積極的な参加をお願い申し上げます。

 

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