限界揚水量に学術的根拠はあるのでしょうか?

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限界揚水量は、段階揚水試験時の揚水量と水位変化を両対数グラフにプロットした際の屈曲点(急変点)における揚水量のことです。ここでは、限界揚水量に関する2つの考え方を紹介します。

 

(その1)
限界揚水量を上回るとわずかな揚水量変化で水位変化が大きくなります。一般的な井戸公式に従えば、透水係数が小さくなることを意味しますが、実際には井戸周辺の流速が大きくなり非ダルシー流れ(層流から乱流へ)になり抵抗が大きくなるという解釈や、流速の増大にともなって帯水層を構成する粒子移動が大きくなり目詰まりが生じ始めているという解釈が一般的です。限界揚水量の通常80%程度を適正揚水量としているのは、後者の立場にたって帯水層を破壊せず、泥だまりへの土砂の流入を極力おさえながら、なるべく多量の揚水量を得ようとする経験的な方策といえます。したがって、根拠の無い数字とは言えません。

 

(その2)
段階揚水試験時の揚水量と水位変化を両対数グラフにプロットしたとき、曲線になる原因の1つとして、井戸スクリーンによる水頭の低下(井戸損失)が挙げられています。この井戸損失の影響は井戸内の水位降下量が大きくなると顕著になります。つまり、揚水量が多くなると“余計に”水位降下量が大きくなるので、両対数プロットは曲線を示すことになります。このような原因に基づく場合、曲線を2つの直線とみなすことには無理があります。しかし、このような事実を理解した上で利用すれば、例えば、どの程度の揚水量ならば極端な水位降下を回避することができるのか、といった情報を得ることができます。詳しくは山本荘毅著「揚水試験と井戸管理」(昭晃堂)をご覧ください。

 

なお、ご質問に対する回答は、あくまで回答者個人の見解です。

 

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