実際に現地調査をしておりませんので100%確実なことはわかりませんが、原発敷地内地下15mから放射性物質を含む地下水がくみ上げられたことが報道されていることについては、次のように考えられると思います。
地下水への汚染ルートとしては、
1)大気中のチリ等に含まれた放射性降下物質が地表面に到達し、水溶性の放射性物質が雨水等の浸透に伴って、地下水位より上部の地盤(不飽和地盤)を降下し、地下水面に達し地下水汚染を引き起こす場合、
2)放射能汚染水が何らかの経路(たとえば地下構造物の損傷箇所からの漏水経路や構造物の下部に通常存在する砕石層やドレーン層(砕石層)経由の経路)から、大量の汚染水が強制的に地下に供給され地下水を汚染する場合
の2つのルートが考えられます。
1)の場合はセシウムの土粒子への吸着とヨウ素の短い半減期(8日)から考えて地下水汚染は起こりにくいと考えられます。
今回は2)の場合と考えられますが、建屋の真下のごく浅い地下水から放射性部物質が検出されたので、放射性物質を含む水が浅い地下水に到達したことは確かです。これは雨水ではなく、多量の汚染された水が地中に入ったこと、汚染水の入った地表付近から地下水まで、水を通しやすい地層か地中の何らかの構造物を伝って、水が直接的に地下水に到達したと考えられます。今後は、物質の移動や広がりが問題となります。
現場の地下水のおよその流向は東(海)に向かっているので、汚染された地下水はゆっくりと海へ向かって流れると推定されます。ただ、局所的な地層構造などによって、南方に広がる可能性もあります。したがって、現場付近の浅い地下水は慎重なモニタリングが必要です。それでも一般に帯水層中の地下水の流速は、一日あたり、数cm~数10cmオーダーと遅いので、すぐに広範囲に影響がでることは考えられません。半減期の長いセシウムでは前述したように土粒子に強く吸着するためにセシウムの動きは地下水流速に比較してさらに遅くなります。ヨウ素は地下水といっしょに移動する可能性が高いのですが、前述したように半減期が短いために広範囲に移動する前に放射性を失ってしまいます。また、大深度地下水へ放射性物質が到達することも、直接、ボーリング孔や井戸などを伝わって、上から汚染水や放射性物質が入らない限り、考えにくいです。
なお、ご質問に対する回答は、あくまで回答者個人の見解です。