ここでは、井戸についての本の紹介をします。庭づくり、特に庭園に関係するものとして庭石と共に重要なのが水であり、その水の演出に関して井戸・滝・池泉があります。上原敬二著:「ガーデン・シリーズ5 井戸・滝・池泉」(加島書店 1958)は、庭設計に必要なことが記載されていますが、井戸についても歴史的なことからを構造的なことまで詳しく記載されています。考古学的な見地からのものとしては、山本博著:「井戸の研究 考古学から見た」(綜芸舎 1970)があります。学術的で専門的な内容で井戸遺構から井戸構造の変遷を研究した本となっています同じ著者によりこの内容を分かりやすく解説したものが山本博著:「神秘の水と井戸」(学生社 1978)で読みやすき構成となっています。
東京都水道局に長年勤め水道の専門家である著者が水道と密接に関係する井戸の話を記載したのが堀越正雄著:「井戸と水道の話」(論創社 1981)である。古代中世に井戸から江戸時代の水道へ至る過程での様々な話が掲載され、井戸掘削については上総堀りについて解説がある。上総堀りについては、民具研究の立場からの大島暁雄著:「上総堀りの民俗 民俗技術論の課題」(未来社 1986)に詳しい解説がある。上総堀りを知るには最適な本であるが専門的な部分も多い。エッセイ風の書物としては大島忠剛著:「ポンプ随想 井戸および地下水学入門」(信山社 1995)がある。特にポンプに対する思い入れが強く、同著者には、大島忠剛著:「写真集 手押しポンプ探訪録」がある。様々なポンプの写真がありなかなか面白い本となっている。考古学の立場からのものでは、鐘方正樹著:「ものが語る歴史8 井戸の考古学」(同成社 2003)と秋田裕毅著(大橋信弥編):「井戸」ものと人間の文化史150(法政大学出版局 2010)がある。前者は井戸の発掘において井戸の中から井戸枠築造技術の歴史的な展開について記載がされている。後者はなぜ弥生中期に突然井戸が出現するのかを含めさまざまな観点から考察したものである。