地下水の汲み上げに起因する問題の一つに地盤沈下があります。この問題は大正時代から注目され、昭和10年には政治家の菊地山哉が「沈み行く東京」(上田泰文堂 1935)という本に著わしています。地下水に関連して書かれた本としては、蔵田延男著:地盤沈下と地下水開発(理工図書 1960)があります。地質調査所での工業用水調査グループの過去12年間の地下水調査の実績を踏まえ、工業用水法等による地下水保全の大切さを基本として地下水の適正揚水について説明がされています。工業用水法と地盤沈下については、同じ著者よる蔵田延男著:地盤沈下と工業用水法(ラテイス 1971)があり、地下水の適正かつ有効に利用するために地下水の汲み上げ規制を行う工業用水法の施行後15年間の実績を中心とした地下水行政について記されている。一般的な読み物としては、三省堂新書の柴崎達雄著:地盤沈下 しのびよる災害(三省堂 1971)が分かりやすい解説書で、ゼロメートル地帯の異変、地盤沈下論争、ゼロメートル地域から脱出について地盤と地下水に関して科学的な観点から記載がされています。地盤沈下は環境問題として大きく注目され、環境庁(現 環境省)として取り組みがされるようになり、昭和53年(1978)には環境庁水質保全局企画課編:地下水と地盤沈下(白亜書房 1978)が発行され、その後平成2年にその改訂版として、環境庁水質保全局企画課監修 地盤沈下防止対策研究会編纂・執筆:地盤沈下とその対策(白亜書房1990)が出版された。後者では、地盤対策行政の要請に応えるものとして、地盤沈下問題の歴史、現行諸制度、地盤沈下の機構、大深度地下利用に伴う地盤沈下問題、地盤沈下の監視方法などについて記載がされている。地域的な地盤沈下に関する本としては、東海三県地盤沈下調査会編:濃尾平野の地盤沈下と地下水(名古屋大学出版会 1985)があります。東海三県地盤沈下調査会が濃尾平野の地盤沈下問題に10年間余り取り組み調査研究した成果についてまとめた本で、地盤沈下現象解明とその対策のために、濃尾平野の水理地質構造、地下水位変動、地下水質の変遷と実態、地下水の涵養と流動、地盤沈下のシミュレーション研究、地盤沈下対策について詳述されています。