雨水地下浸透桝(マス)における問題点は?

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井戸をのぞき込むと井戸の中に水面が見えます。実はこの水面から下の地層の間隙空間は、ほぼ100%地下水が「詰まって」います。つまり帯水層となっています。一方、この水面から地表までの間の地層間隙には、水だけでなく空気も入っています。このような、間隙中に空気と水が詰まっている領域を、不飽和帯と呼びます。雨が地面に浸透すると、雨水は不飽和帯の部分を鉛直下方に移動し、やがて帯水層に到達します。

さて私たちは地下水が清浄であるという印象を持っていますが、実はその秘密はこの不飽和帯にあります。雨が不飽和帯帯を浸透する過程で様々なゴミ、微生物等が除去されます。土が水をきれいにしてくれる、というイメージです。不飽和帯とひとくくりでご説明しましたが、ろ過能力・浄化能力は不飽和帯の物性によって様々です。最も適しているのは我が国の広くを覆っている火山灰土(関東地方では関東ロームというよく見かける赤土です)であり、砂地盤や礫地盤では浸透速度が速くろ過・浄化効果は少ないと言えます。また粘土のような水を通しにくい土では浸透速度が遅すぎて涵養効果が小さいことになります。

雨水地下浸透は自然の力を借りて、地下水中の不純物を”ろ過”してくれたのち、帯水層へ水を供給する、という優れた施設と言えます。暗渠(あんきょ)排水や田んぼには、地下水位が上昇するので排水量が増えたりすることがあるかもしれませんが、ほぼ影響はありません。雨水浸透マスの耐久性に関しては、桝そのものはコンクリートの二次製品なので、よほどの強い力がかからない限り壊れることはありませんが、流入してくる雨水に含まれる微粒子分の堆積によって目詰まりし、浸透速度が減少することがあります。目詰まりした層や表面に堆積した粘土ケーキ等を除去することによって浸透能力の回復が可能ですが、よく浸透するからと言って帯水層に達するまで不飽和層を除去することは、ろ過機能・浄化機能の喪失につながり、広義の意味では地下水汚染にもつながりますので、おすすめできません。

なお、ご質問に対する回答は、あくまで回答者個人の見解です。

 

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