ブックリスト

「見えない巨大水脈 地下水の科学」 使えばすぐには戻らない「意外な希少資源」

日本地下水学会/井田徹治著

講談社(2009)

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日本地下水学会の創立50 周年を迎えるのを機に、多くの人に地下水への関心を持っても らうために日本地下水学会の市民コミュニケーション委員会のメンバーと共同通信社科学 部の井田徹治編集委員が共同で企画・編集にあたり「地下水とは何か?」「地下水と人間と のかかわりは?」などに焦点を絞って科学的な知見を集め、わかりやすく解説した書である。

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シリーズ近江文庫 台所を川は流れる 地下水脈の上に立つ針江集落

小坂育子著

新評論(2010)

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琵琶湖湖西に位置する高島市新旭町針生集落には、カバタと呼ばれる自噴地下水と水路が融合した水利用システムが各戸を繋いでおり、古くからこれを利用した 生活が営まれている。針生の生活を見つめることにより、地下水が、飲用もしくは生活用水といった実利面だけでなく、人と人、人と自然との結びつきを強める 上で重要な役割を果たしていることがわかる。水道の発達によって廃れつつあったカバタの価値が再認識され、人々が積極的に保全に関わるまでになった町の歴 史も紹介されている。

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アジアの地下水

辻 和毅 著

櫂歌書房(2010)

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本書では、地下水コンサルタントとしての著者の長年の実地体験と研究成果に基づき、 アジアとくにモンスーン地域の地下水を取り巻く問題について考察し、保全しつつ将来に わたり有効に利用するための基本的な政策シナリオが提言されている。目次を見るだけで もおわかりのとおり、本書がカバーする範囲及び内容は非常に多岐にわたり、各地域の地 下水の概観を知る上でも参考になる図書である。

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改訂増補 地下水探査法

山本荘毅著

地球出版(1966)

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序で著者が述べているように、本書は①教科書であるよりも技術書として現場で利 用できるものにした。②類書が少ないため術語の定義にページを割いている。それら は、文部省大学学術局、学術用語審議会の土木工学、地球物理学、地理学部会の決定、 農業土木学会の用語に従った。③国土調査法における地下水調査の趣旨にのっとり、 水の循環という観点から地下水を扱ったので地表水との関係を強く出した。調査より も探査に重点をおくと共に報告書についても一章を設けて詳述した。④地下水探査で は最も重要な問題であるのに国土調査ではボヤかしている水理学的定数の問題に一つ の焦点をおいている。・・・など50 年前の執筆当時から今日の地下水学理論の底流を 極めており著者の広さ深さ先見性に敬服するものである。

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地下水調査のてびき -大地の水環境のしらべかたー

応用地質研究会著

地学団体研究会(2011)

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本書は、応用地質研究会会員によって執筆された、地下水調査の実践的ハンドブックで ある。地下水に関する専門書はいくつかあるが、門外漢には難しすぎるものがほとんどで ある。これに対し本書では、専門家だけでなく地学や自然科学の専門的経験を持たない読 者も利用できるよう工夫がされており、楽しめる本である。地下水に関心を持つより多く の方々が本書を通じて地下水についての理解を深めることが期待される。

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陸水の化学

日本化学会編

学会出版センター (1992/03)

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陸水とは海水との区別としているものであるが、淡水と直接はリンクせずいろいろな水が あることが本書を読むとよくわかる。目次をみてわかるように、大きく分ければ、地上の 水に影響する因子、各種陸水の状況、各国に存在するバラエティーに富んだ陸水の紹介で 成り立っている。学会の企画委員会で本書の作成を行っているので、内容は骨太で入りに くい印象を与えるが、本全体の構成が地下水を取り囲む種々因子を網羅したものとなって いるほか、各章の内容はロジカルであるため、非常に参考になるものと思う。

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シリーズ 環境と地質 第3巻:水環境と地盤災害

B.W.ピプキン・D.D.トレント著

古今書院 2003 年

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本書は、「GEOLOGY and the Environment」の訳書である。この本は5冊のシリーズになっ ており、IIIの第8章に淡水資源の項があり、そこでは地下水の話題が主に語られている。 ここでの内容は主にアメリカの地下水を例にとって形成されているが、シリーズ自体のテ ーマが地質学であるため、地質と地下水の関係が非常にわかりやすく説明されている。本 としては途中コラムで「考えてみよう?」などがあるほか、章ごとでの用語集があるなど、 ビジュアルも含め非常にわかりやすい。シリーズ全部を読んでみたいと思わせる本である。

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水の世界地図 The Atlas of Water

Robin Clarke・Jannet King著

丸善出版(2006)

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この本は、「The Atras of WATER」の訳書である。日本は温帯で雨の多い地域に位置して おり、水に対してあまり切迫した危機感は感じないが、この本は世界の水問題の個別のト ピックについて、数字を前面に出し、ロジカルに説明している。また、ビジュアルも多用 しているため、教育用にも非常にわかりやすい。地下水の話題のみに特化した本ではない が、各トピックに地下水の話題が随所にちりばめられている。地下水も水資源の一つであ り、このように水資源全体からの観点を常に忘れてはいけないという意味で、本書は重要 なものである。(現在は2nd Editionが出ているようです)

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地下水は語る 見えない資源の危機

守田 優著

岩波書店(2013)

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著者は、東京都土木技術研究所(現 東京都土木技術支援・人材センター)にて地盤沈下・地下水・都市河川についての研究に従事され、その後大学で教鞭を取 られている地下水の専門家です。本書では、地下水環境に視点を置き、地下水の汲み上げや揚水規制、土地利用と雨水浸透事業など地下水への人為的な働きかけ を重ねて解説がされています。特に、地盤沈下と地下水枯渇の原因である地下水低下や枯渇について実務レベルでの解説がされている。井の頭池の涸渇原因は地 表の開発のみでなく地下水の過剰汲み上げが主な原因であり、武蔵野台地の被圧帯水層は不圧化(空洞化)していることを明らかにされている。実際の事例に 従った具体的かつ分かりやすい記載となっていることから、地下水を理解する上では好著です。地下水に関する一般普及書が少ない中、このような本が多くの人 に読まれ地下水に対する理解が深まっていくことが期待されます。

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「育水のすすめ」地下水の利用と保全

西垣誠・瀬古一郎・中村裕昭編著
GUPI共生型地下水技術活用研究会著

技報堂出版(2013)

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量、質ともに危機的な状況にある地下水を守るため、日本各地で名水を保全してきた。しかし、それだけでは十分ではないと考えた著者が「育水」を提唱し、自 分が使う地下水は自分の力でつくることを考える仲間を増やしたいため出版した一冊。全体が7つのカテゴリに区分されていることで分かりやすく、科学、工 学、法律など多面的に地下水を学ぶことができる。身近な名水は水循環から俯瞰すれば一部であることを気づかせてくれるだけではなく、「水穂の国」日本こそ が育水を世界に発信し、資源として良質な水をつくれる国であることに改めて考えさせられる一冊である。

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